日本の成長力を奪うゾンビ企業増加は銀行の責任でもある

近年は、実質的には破綻状態なのにも関わらず、事業を続ける「ゾンビ企業」がどんどん増えていますね。

帝国データバンクによれば、2021年度にはゾンビ企業が18万8000社もいて、全体の12.9%に上っています。
この現象は、金融機関からのリスケ(返済条件変更)などの支援が大きな原因だと言われています。

今回は、ゾンビ企業がどんな背景で増えているのか、金融機関はどんな役割を果たしているのか、そしてこれからどうなるのかを一緒に考えてみましょう。

ゾンビ企業とは

ゾンビ企業とは、3年以上もインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満で、設立から10年以上経っている企業のことを言います。
ICRは、借入金の利息を払えるかどうかを示す指標です。

本来なら、ICRが1未満の企業は倒産すべきなんですけど、リスケなどの金融支援を受けて、なんとか事業を続けているんです。

 

 

ゼロゼロ融資

この10年間で、倒産件数を抑えるための国策が進められ、リスケや返済猶予、債権カットなどの私的整理が広まっています。

特に、リーマン・ショックの後にできた中小企業金融円滑化法や、新型コロナウイルスでの実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」などの支援策が、ゾンビ企業増加の原因になっているとされています。

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ゾンビ企業は増加中

帝国データバンクの企業財務データベース「COSMOS1」によると、2021年度のゾンビ企業率は12.9%に達し、前年度から1.5ポイント上昇したことが明らかになりました。

この水準は、東日本大震災後の経済混乱と倒産急増を抑制していた時期と同等です。

当時、30万~40万社が倒産予備軍と言われていましたが、そのほとんどが延命されました。

 

このデータから推定される2021年度のゾンビ企業数は、約18万8000社で、前年度から13.3%増加しています。

2022年春からは、中小・零細企業に私的整理を促す事業再生ガイドラインが始まり、2023年1月にはコロナ借換保証が開始されました。

これを考慮すると、2022年度のゾンビ企業の増加傾向が続くことが予想されます。

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ゴネれば得する

一方、破産や民事再生法などの法的整理は、2022年に6376件と前年から6%増加しました。

これに対し、私的整理は2600件強(2021年度)に達し、既に3分の1を超えています。
将来的には両者の比率が逆転する可能性もあります。

長年にわたり、私的整理への多数決原理導入が議論されています。
この多数決原理導入は、企業価値の毀損を最小限に抑えられる利点がある一方で、全行一致の原則が高いハードルとなっています。

しかし、法的整理と同じ多数決原理にすることで、利便性が大幅に向上するとの意見もあります。

政府は、経済産業省や中小企業庁などで検討を進めており、2022年末には「私的整理円滑化法案」の検討を始めました。
ただし、実現にはまだ多くの障壁があるとされています。

再建弁護士の間では、様々な見方がありますが、多数決原理導入により債務者や債権者双方にメリットがあるとの意見もあります。

一方で、「ゴネ得」になると懸念する声もあります。

また、多数派を形成するメインバンクは再建案に今まで以上に積極的にコミットしなければならなくなるとの見方もあります。

国策により生まれたゾンビ企業

「国策」として私的整理の環境整備が進められている以上、いずれその手続きに一般債権者も巻き込まれる時が来るかもしれません。
少なくとも、特定の大口債権者などは対象とされる可能性があるでしょう。

多数決原理が導入されれば、私的整理のハードルが引き下げられ、迅速な手続きが可能になると期待されます。
ただし、債権者サイドには手続き参加が任意なのか、離脱が自由なのかなどの問題が残ります。

これらの問題を解決するために細部を詰めていくと、法的整理と同様の煩雑さになるというジレンマも存在します。
そして、私的整理による企業再建が増加していくにつれて、ゾンビ企業も着実に増えていくことになるでしょう。

今後、政府や関係機関は、ゾンビ企業問題と私的整理の適切なバランスを見つけながら、持続可能な経済成長と企業の健全な再建を促す施策を進めていく必要があります。

ゼロゼロ融資

結論として、日本のゾンビ企業増加傾向は、私的整理の導入や多数決原理に関する議論に影響を受けることが予想されます。

今後の経済状況や政策の動向によって、ゾンビ企業の数やその影響が変わっていくことが予想されるため、引き続き注視していく必要があるでしょう。

個人的には、どんどんゾンビ企業は市場から撤退すべきと考えます。

ついでに銀行もどんどん潰れていった方が、イノベーションは起きやすいと思います。

 


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