粉飾決算事例 巨額損失を隠蔽した2つの事件から考える

今回の記事はインチキな決算についてです。

インチキな決算とは粉飾決算です。

日本で起こった巨額の粉飾決算の事例を基に、その典型手法を紹介します。

2つの事件から、銀行員として取引先を見る目で重要なのは決算書だけではないということを知ってもらいたいです。

粉飾決算とは

粉飾決算とは不正な会計処理によって財務諸表をごまかして利益や損失について虚偽報告することです。

粉飾決算で多いのは、損益計算書の損益を意図的に操作して業績を隠蔽し経営実態を良く見せるパターンと、貸借対照表の資産を過大に計上したり、負債を簿外計上することによって、財務内容を実態より良い内容にするパターンです。

また逆に黒字を赤字に見せて税金の支払いをごまかすパターンも粉飾決算の一つです。

粉飾決算とは
▶財務諸表をごまかして虚偽報告すること

粉飾決算のメリット・目的

なぜ粉飾決算をしてしまうかといえば、粉飾する側にメリットがあるからです。

■信用不安を払拭できる
■申告する納税額をごまかせる

赤字は、対外的な信用不安を招きます。信用不安は営業上不利になることが多く、商品などの仕入条件や銀行からの借入金などに影響します。また官公庁などの発注する工事への入札参加資格などを失う可能性もあります。

また黒字を赤字に見せかけることで、本来の納税額を過少申告する目的もあります。

日本国内での粉飾決算事例

ここからは日本国内で行われた有名な粉飾事例を2つ紹介します。

ひとつは「飛ばし」と呼ばれる手法で有価証券等の含み損を隠蔽した手法です。

もう一つは「連結外し」と言われる手法です。損失を出した子会社を出資比率を変え、連結決算から外す手法です。

オリンパスの粉飾…子会社への「飛ばし」

精密機器大手メーカーの「オリンパス」はバブル以前から「財テク」と呼ばれる不動産や株式投資等を積極的に実施していました。

バブル崩壊後、価値が下落した株式などの有価証券に多額の「含み損」が出ました。

「含み損」とは購入したときの簿価と時価の差額による損失です。簡単にいえば100万円で買った株式が1万円の価値になっていれば含み損は▲99万円です。

含み損とは
▶株などの資産の時価が購入時から値下がりし、売却時に確定する損失

オリンパスはこの損失を「飛ばし」で隠蔽しました。

「飛ばし」とは帳簿上の損失を処理せず、簿外に飛ばすという意味です。

「飛ばし」とは
▶貸借対照表上の資産などを、簿外(オフバランス)に計上すること

オリンパスの「飛ばし」の手口

オリンパスは多額の損失を隠蔽するために、含み損のある保有株式を子会社に譲渡しました。

本来であれば時価で売却し減額処理によって損失計上すべきですが、そのままの金額(簿価)で譲渡しました。

簿価で売り飛ばせば、損失は全く出ません。

子会社は「タックスヘイブン」と呼ばれる租税回避地の会社だったため秘密は明かされることはありませんでした。その後、子会社を消滅させます。

これで帳簿上、本来損失を計上しなければいけない株式は隠蔽されました。

これが「飛ばし」です。

このオリンパスの粉飾事件について詳しく知りたい方はザ・粉飾 暗闘オリンパス事件 (講談社+α文庫)」というノンフィクション小説に詳細に描かれています。

興味を持たれた方は一度読んでみてください。 

オリンパスの「飛ばし」の結末

結局、オリンパスによる巨額の粉飾決算は告発によって暴かれます。

オリンパスの旧経営陣は2020年に約590億円の損害賠償請求を命じられるなど、有罪が確定しています。

出典:日本経済新聞 日経電子版2020年10月26日付

旧カネボウの粉飾…「連結外し」

かつて繊維製品や化粧品メーカーとして大手だった「旧カネボウ」は粉飾決算によって会社を解散しました。

旧カネボウは100年以上も続く、日本を代表する大手企業でした。

旧カネボウは元々は繊維メーカーでしたが多角化経営により規模を徐々に拡大。特に化粧品事業は名前を覚えている人も多いのではないでしょうか。

しかし、繊維事業などは海外メーカーとの価格競争に破れ厳しい環境でした。

繊維事業など不振事業の赤字を化粧品事業の黒字が補完する収益構造が続いていました。

そしてバブル崩壊後、債務超過を隠すために粉飾決算を繰り返します

その手法が「連結外し」と呼ばれる手法でした。

「連結外し」とは
▶本来、連結会計に入れるべきグループ子会社などを出資比率を抑え連結決算から外すこと
「連結会計」とは
▶支配関係にある企業集団を単一の組織体とみなし、その経営成績や財務状態を親会社が把握するために作成する会計制度

旧カネボウの「連結外し」の手口

2000年3月期から日本国内に新会計基準(実質支配力基準)という会計基準が適されました。

新会計基準については「EY新日本有限責任監査法人」の企業会計ナビが分かりやすいので参照ください。

【新日本有限責任監査法人】連結財務諸表を作成するにあたり、連結に含める子会社の範囲の決定、親子会社間の会計処理の統一、ま…

子会社を新会計基準に基づきグループに入れてしまうと、カネボウグループ全体の最終利益が赤字。また債務超過に陥っていることが判明すれば、銀行からの融資も受けられず、上場廃止も確実でした。

そのためカネボウは子会社に対する出資比率を抑え、形式上グループから外します

また子会社の株式は「いつか買い戻す」という約束のもと、裏金を外部企業に譲渡

これにより赤字を黒字に、債務超過を資産超過に粉飾した有価証券報告書を提出し、翌年も同様の手法で粉飾を繰り返しました。

旧カネボウの結末

結果的に、カネボウの経営は行き詰まり、産業再生機構の支援を受けます。

2005年に東京証券取引所および大阪証券取引所は旧カネボウの上場廃止を決定。

2007年に旧カネボウは解散し120年にわたる歴史に終止符が打たれます。

また旧経営陣が証券取引法違反で逮捕されます。粉飾決算を指南していた中央青山監査法人の公認会計士も証券取引法違反で逮捕されます。

これにより中央青山監査法人は2006年に金融庁から業務停止命令を受け、後に解散に追い込まれました。

粉飾決算はなぜ起こるのか

なぜ、オリンパスも旧カネボウも粉飾決算をしたのでしょうか。

いずれの事例も共通していることがあります。

■経営陣が信用不安を払拭するため
■帳簿から消えれば分からないと考えたため

信用不安の払拭のために粉飾決算に手を染める

1つは経営陣が信用不安を払拭するために粉飾決算に手を染めたことです。

なぜ信用不安を払拭したいかといえば、銀行からの借入ができなくなるかもしれませんし、上場廃止という結末を迎えるかもしれないからです。

しかし、今回の事例でも分かるようにいつかはバレます。いってみれば、粉飾決算はただの時間稼ぎであり、結果的に損失が拡大するだけです。

もし、取引先に同じような考えの経営者がいれば、もしかしたら粉飾に手を染めているかもしれません。

それは銀行の損失に繋がってしまうかもしれません。

帳簿から消えれば分からない

そして、もう一つは有価証券報告書などの帳簿上から消えてしまえば、第三者には分からないと判断したからです。

これは経営者や監査法人のモラルの話でもありますが、簿外(オフバランス)に資産や負債が移されると、たしかに第三者には簡単に分かりません。

融資判断に重要なのは決算書に出ている数字だけではありません。

経営者の資質やモラル、また簿外に何も問題はないか、といった目線が銀行員にはたいへん重要です。

取引先が銀行を騙そうと思えば銀行員なんて簡単に騙されます。気をつけましょう。

関連記事

コンサルティング営業をする上で、財務諸表(決算書)は取引先の実態を知る強力な情報源です。しかし財務諸表だけを見て、取引先を判断するのはたいへん危険です。なぜなら、財務諸表だけでは把握できない情報があるからです。今回の記事は、銀行[…]


人気ブログランキング

あなたの強み、 見つけてみませんか?
グッドポイント診断

人にはそれぞれ強みがあります。
けど客観的に把握しづらい…。
グッドポイント診断は、約30分でできる本格診断サービス。
診断に答えるとあなたの強みが判明。
診断結果は自己分析にも活用できますよ!