元銀行員が語る資格 ー出世する「おすすめ資格」なんてあるの?ー

銀行で働いていると、いつか直面する問題があります。

それは「資格」です。

「資格」に問題があるわけではありません。

問題は、「資格」が昇格や昇進などの出世に使われることです。

しかし、銀行員の出世に資格は必要でしょうか?

そこで今回は「資格」について考えてみます。

出世に必要な「おすすめ資格」で考えるのはやめよう

銀行員の資格といえば、よく昇進や昇格に役立つか?という観点で語られます

しかし、出世に必要な資格なんて本当にあるのでしょうか。

「あの資格を取れば出世できる」という人事制度の銀行など、あまり聞いたことはありません。

業務に必要な資格、ということなら分かります。

例えば証券外務員などです。

しかし、証券外務員資格を取得したからといって出世できるでしょうか?

業務上、必要なだけであって出世と結びつけるのは少し違います。

もちろん取得していない人が上に立つのは変です。しかし、それは出世とは別次元の話です。

本来、ビジネスに必要な能力は職位や立場、業務内容によって変化するはずです。

また、コーチング力やマネジメント力といった「対人関係能力」管理職にとっては資格よりも重要でしょう。

ただ、そんなパーソナリティを持っている人でも、銀行では資格を持っていなければ昇進・昇格できないことがあります。

それに便乗して「銀行員で出世するならこの資格」みたいなブログや記事はナンセンスだと思います。

このようなブログを見て資格取得に惑わされる人も多いのではないでしょうか。

もし、出世に必要な資格なんてものが存在するなら、仕事よりも資格取得に取り組んだほうが効率的です。

ただ、行員が仕事よりも資格取得を優先しているような銀行と誰が取引したがるのでしょうか。

多くの資格ブログが「出世」について語っていますが、本当なんでしょうか?

 

資格はただの証明

出世に必要な資格があったとしても、それで出世するのは変だと思いませんか。

逆に、資格は取得していなくても業務をきちんとこなせる方が現場は助かります。

資格を持っていなければ従事できないのならば、取る必要がありますが、「資格=業務がこなせる」ではありません

資格は能力を証明する分かりやすい手段(ツール)です。

だから資格によって出世できるという考えは、間違っています

必要な能力や資格は職位と共に変化する

もちろん、資格取得を否定するわけではありません。

やはり資格を取れば、できることや任せられる仕事が増えます。

自分の成長につながるので、資格を取ること自体は推奨されるべきです。

ただ、必要な能力や資格は、職位と共に変化しなければいけません

「うちの支店長はFP1級を持っている」と言われても、銀行の支店業務に役立たせることができるでしょうか。

支店長自らがお客様のライフプランを考えてあげる、一見すると素晴らしいスキルです、

しかし、もし支店のマネジメントが全く出来ないなら支店長になるべきではありません。

マネジメント能力が欠如したFP1級取得者なら、支店長ではなくトップセールスマンとして活躍してもらった方が、よっぽど銀行に貢献できます。

その辺りの能力判定に、なぜか銀行は鈍感です。

いや、鈍感というよりも人を見ていないだけかもしれません。

実際、能力というのは判断がとてもむずかしいです。

そこで、出世の判定時に能力が分かりやすい「資格」を使うのです。

もちろん管理職になれば自然と身につく能力もあります。

たしかにマネジメント能力は経験がないと育たないかもしれません。

しかし、階層によって必要な能力を変化させられない人物なら、出世すべきではありません。

管理職になったばかりのロワーマネジメント(監督者層)とトップマネジメント(経営者層)で、同じ能力が求められるのなら、係長や課長、部長といった肩書や給与で差をつける意味がありません。

この考え方に基づく理論を「カッツ理論」といいます。

出典:グロービス学び放題より

 

「カッツ理論」について

あなたは「カッツ理論」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

カッツ理論とはロバート・カッツ教授が提唱したビジネススキルと人材の関係性についての理論です。

管理職に必要な能力は3つあり、その重要度は職位が上がるに従って変化するという理論です。

管理職に必要な3つの能力とは次のとおりです。

1. テクニカル・スキル
2. ヒューマン・スキル
3. コンセプチュアル・スキル

1. テクニカル・スキル

テクニカル・スキルとは業務遂行するための能力や知識のことです。

専門的な知識なども該当します。

業務に必要なために取得した資格や免許は、これに該当します。

例えば、次のようなものです。

経理業務に必要な「簿記」の資格
議事録作成のための「Word」や「Excel」のスキル
営業マンが資料を作成するための「商品・サービス」の知識

2. ヒューマン・スキル

ヒューマン・スキルは対人関係能力です。

管理職にとって最も重要なスキルです。

部下や同僚、上司とのコミュニケーション力や社内外での交渉力のことです。

コーチングやマネジメントのスキルなど、対人関係だけでなく指導・管理面でのスキルも該当します。

このスキルは、一般社員であろうと経営層であろうと、どの職位であっても必要です。

3. コンセプチュアル・スキル

コンセプチュアルとは直訳すれば「概念的」です。

概念的とは、目の前の業務をこなすだけではなく、将来ビジョンや戦略などを考えることです。

コンセプト(構想)を作るスキルといえます。

企業戦略など、のごとを大きく捉えて考える能力です。

カッツ理論で考える資格

カッツ理論から資格について考えてみましょう。

簡単なたとえ話です。

高度な資格取得者でコミュニケーション能力に乏しい支店長と、資格はベーシックなものしか持っていないが、コミュニケーション能力の高い支店長、どちらが銀行にとって有益でしょうか。

ヒューマン・スキルが欠如した高度な資格取得者は、出世すべきでしょうか。

私は出世すべきでないと思います。支店が混乱するだけでしょう。

資格は業務能力を判断してもらう単なる証明であり、出世に必要な要件ではないと分かって頂けるのではないでしょうか。

銀行からは、とにかく資格取得を目指すよう指導されることが多いです。

しかし、あなたの周りの管理職をよく見てください。

テクニカル・スキルは持ってても、ヒューマン・スキルが無い人物がたくさんいませんか?

コンセプチュアル・スキルなんて持っている銀行員なんて、ほとんどいないでしょう。

強いていえば「本部からの指示に従う」程度のコンセプト(構想)はあるかもしれませんが、将来の銀行のあるべき姿を考えている人なんて皆無に近いでしょう。

資格至上主義のような考え方で出世した人ばかりでは、銀行は行き詰まってしまう可能性が高いです。

また銀行から転職したいと考える人が多くなる原因かもしれません。

関連記事

本気で転職を考えているわけではないけど、転職に少しだけ興味がある。すぐに銀行を退職したいわけではないが、将来は分からない。自分が本当に銀行に向いているか分からない。このような考えを持っている銀行員のあなたに、今回はおすすめの[…]

資格は難易度で選択しない

もう一つ、銀行員の資格で問題なのは「難易度」で判断してしまいがちなところです。

出世のため、できるだけ簡単に資格取得したいと考える銀行員は少なくありません。

ただ、考えてほしいのはそもそも簡単に取得できる資格に価値なんてあるでしょうか?

誰もが簡単に取得できる資格なら、別に資格でもなんでもありません。

本来、資格は「業務に活かしたい」「将来独立したい」といった、自分のビジョン達成の手段でもあります。

単純に考えてほしいのですが、自分の仕事や将来ビジョンに必要かどうかを判断せず、難易度で資格を選択するという行為に本当に意味があるでしょうか。

転職のための資格取得も無意味

また多くのサイトで「転職におすすめの資格」なども掲載されています。

しかし、資格さえ持っていれば転職がうまくいくわけではありません。

「資格を持っている=即戦力」ではないからです。

転職と資格を考えるうえで重要なのはタイミングです。

資格を活かせる職種の募集があるかどうか?

ここがポイントです。

例えば経理系の資格を持っていても、経理の募集がなければアドバンテージになりません。

中途採用は新卒採用と違い、募集時期が決まっていません。

転職したい時期と募集時期が合わなければ、せっかくの資格も役には立ちません

自分のいまの仕事に必要、または将来のビジョンが明確である、このような明確な理由がある人はよいですが、何も考えがない人が安易に「おすすめ資格」なんてものに乗っかるのは止めたほうがよいです。

転職も資格取得もビジョン達成のための手段であり、目的ではありません。

関連記事

転職したい銀行員に必要な資格はなんでしょうか。資格は求人先にアピールするひとつの手段ですが、自己PRを誤解している人も多いようです。銀行員時代に数多くの資格を取得した私からのアドバイス記事です。銀行からの転職に資格は必要か転職活[…]

「おすすめ」資格に惑わされないことが大切

今回のまとめです。

資格は単なる証明 出世と結び付ける必要はない
必要な能力や資格は職位と共に変化させる
取得する資格を難易度で選択しない
転職するための資格取得は時間のムダ
あなたが将来ビジョンを持っているなら取るべき資格を選択し、取得に向けて学習すべきです。
転職後の仕事に必要な資格、というのも同様です。
しかし、銀行で出世するために資格取得を考えるのは本当に無意味です。
仮に出世できても、ヒューマン・スキルを持ち合わせていないなら周囲から煙たがられる存在でしかありません。
注意すべきは、多くのブログサイトの「おすすめ」資格に惑わされないことです。
そういう私もブログで資格の記事を書いたりしていますが、あくまでも「業務に役立つ」目線で書いています。
出世とか関係ありませんので、ぜひ読んでみてください。
関連記事

資格取得に取り組む銀行員って多いですね。最近、銀行の後輩から資格取得について相談を受けました。あまり活用できない資格取得に取り組んでいたので、とりあえず止めるように伝えました。そこで今回は銀行員に必要な資格について記事にしてみま[…]

 

エージェントの活用法

転職活動を始めるにあたり、転職エージェントを利用する場合はどのようにキャリアアドバイザーと付き合っていけばいいのでしょうか。
転職の成功率を高める、転職エージェントの活用方法をご紹介します。