銀行では教えてくれないコンサルティング ーVRIO分析ー

新聞やニュース等で「銀行がコンサルティングに注力していく」記事が増えてきました。

コンサルティングでは課題を把握することが最も重要です。

ただ取引先に課題解決の提案ができなければ意味がありません。

手数料も頂けません。

というか、もらったら駄目でしょう。

しかし「どうやって課題を解決すればいいのか?」と悩む銀行員は多いでしょう。

なぜなら銀行では「戦略論」や「フレームワーク」について学習をしないからです。

そこでコンサルティングに悩むあなたに課題解決に必要な経営戦略論を紹介します。

フレームワークなども紹介します。

次のような方が読めばの戦略の知識が深まります。

  • 新入行員
  • 経営戦略に興味がある方
  • コンサルティング営業を始める方
  • 取引先の経営課題を解決したいと考えている方

事業で重要なのは、競争優位性を明確にすることといわれています。

ただ優位性は何もしなければ他社に模倣されてしまいます。

模倣されてしまうと、優位性はなくなります。

持続的な成長には、競争優位性を保ちながらも競合他社に模倣されない仕組みの構築が重要です。

また、その競争優位性を実行し、進化させる組織体制も必要不可欠です。

今回の「VRIO分析」は、戦略的に持続可能な競争優位性を作り出すためのフレームワークといわれるものです。

では分析方法などについて簡単に説明していきます。

VRIO分析とは

では、VRIO分析とはどういうものでしょうか。

VRIO分析はアメリカの経営学者ジェイ・B・バーニーが提唱したフレームワークです。

考え方はシンプルです。

まず取引先の経営資源を確認します。

例えば、組織や人材、技術や工場・店舗などの経営資源(リソース)です。

それらの経営資源のうち、競争優位性となっているものが何かを見つけ出します

「VRIO」とは、次の4つの頭文字を意味します。

■ 提供価値(Value)
■ 希少性(Rarity)
■ 模倣困難性(Imitability)
■ 組織(Organization)

■ 提供価値(Value)

経営資源が市場で価値があると認識されているかどうかです。

例えば、商品企画力に長けた人材が多いといった価値を所有しているとします。

企画力に優れていれば、次々とヒット商品を生み出すことができます。

このような人材が、市場に価値を提供している経営資源だとしましょう。

もし、これらの優秀な人材が去ってしまった場合、これまでと同じ価値を提供し続けることが可能かどうか?

去ってしまえば価値を提供することが難しいなら、これらの人材は「価値がある」ということです。

■ 希少性(Rarity)

経営資源に希少性かあるかどうかで判断します。

いかに経営資源に価値があっても、競合他社も簡単に手に入るようでは競合優位性になりません。

例えば、工場や機械を所有していても、誰でも購入できてしまうものなら希少性はありません。

誰でも手に入るものでビジネスを行えば、参入障壁が低いために競争激化になります。

自動車部品や電気製品の下請企業などは典型的な例です。

しかし、逆に他社にないリソースを持っていれば、それが強みとなり優位性に繋がります。

■ 模倣困難性(Imitability)

経営資源が模倣(マネ)されやすいかどうかを分析します。

ここで間違っていけないのは現在は希少性のある経営資源も永続的に安泰とは限らないことです。

模倣しやすいならば、将来的な希少性が減り、優位性が薄れます。

模倣困難性の要因となるのは次の5つです。

1. 時間圧縮の不経済
2. 特許 
3. 因果関係が不明
4. 経路依存性
5. 社会的複雑性 
難しい用語ですが、簡単に説明していきます。

1. 時間圧縮の不経済

「時間圧縮の不経済」とは簡単にいえば、「模倣するのに時間がかかること」です。

模倣に取り組む総時間は同じでも、コツコツと時間をかけて取り組むものと、まとめて取り組むものでは効果が違います。

つまり短期間で取り組んでも効果が薄いものは模倣されにくいということです。

2. 特許

「特許」は法律によって守られているので、模倣したくても出来ません。

最も模倣困難性が高くなる要因です。

3. 因果関係が不明

「因果関係が不明」とは、「これをすれば、この経営資源が手に入る」という因果関係が把握できないということです。

模倣するには構成要素を分解していけば分かりやすいのですが、単純な因果関係では説明できない経営資源もあります。

たとえば、マニュアルなど形式知で継承されている技術やノウハウではなく、暗黙知で継承されるようなものは、簡単に模倣できません

4. 経路依存性

過去の出来事の順序が経営資源の形成に影響していることです。

過去と現在の状況は全く無関係であったとしても、過去の何かしらの意思決定によって、その経営資源が出来上がったというものは模倣しにくくなります。

過去の歴史が将来を決めてしまったのであれば、模倣は出来ません。

5. 社会的複雑性

「3.因果関係が不明」でも記載しましたが、模倣する順序として、経営資源の構成要素を分解することが重要です。

しかし影響している要素が絡み合って複雑すぎる場合は模倣できません。

例えば、地域と企業風土などが絡み合った結果、顧客満足度が高くなり優良企業と言われている、といった場合です。

■ 組織(Organization)

経営資源を有効活用できる組織でなければ、価値や希少性、模倣困難性を持っていても意味がありません

経営資源をうまく使いこなせる組織こそ、競争優位性があるといえます。

経営資源を活用する組織体系や規則・ルールが整備されているかどうか、などがポイントです。

また、企業文化や企業風土も重要です。

VRIO分析の方法

「VRIO」の意味についての理解はできたでしょうか。

では、実際にVRIO分析をやってみましょう。

前提条件は「提供価値」「希少性」「模倣困難性」「組織」の4つの項目ごと、個別で判断することです。

以下のチェックをしていきます。

「提供価値」があると判断したら「希少性」に進みます。

「希少性」の有無を判断したら「模倣困難性」について考えます。

「模倣困難性」を確認したら最後に「組織」が構築されているかをチェックします

この4つを確認し、すべて「Yes」であれば「持続的な競争優位を持ち、経営資源を最大限活用できている」と判断できます。

「No」があれば、取引先の課題を確認し、対策を考えてあげます。

■ VRIO分析の注意点
・4つめの「組織」が「No」だった場合は、「持続的な競争優位はある」と判断もできますが、場合によっては「競争劣位」にあると判断される可能性もあります。これは、どれだけ立派な経営資源があっても、使いこなすことができない組織であれば、「提供価値」は存在しないともいえるからです。

・1回だけのチェックではVRIO分析としては不十分です。できれば数回、最低でも2回は取引先の特徴を見直してみましょう。

VRIO分析の対策

本来、VRIO分析は経営資源のうち、競争優位性となっているものが何かを見つけ出す手法です。

逆に考えれば経営資源が足りていない、あるいは持っていないものを見つける手法にもなります

では、何が不足しているのかなどをどうやって見つけ出していけばいいでしょうか。

次のようなステップで分析していくことが有効です。

1. バリューチェーンの洗い出し
2. 経営資源の洗い出し
3. VRIOの再確認
4. 経営資源への投資

1. バリューチェーンの洗い出し

まずバリューチェーンを抽出します。

バリューチェーンとは、自社の事業構造やプロセスを分解して、自社の活動のどの部分が顧客に対する提供価値になっているか判断するフレームワークです。

それぞれの業界に一定の型があります。

一例として、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電メーカーのバリューチェーンを下図に載せました。

メーカーであれば、下図のようなプロセスが一般的です。

出典:日経バリューサーチより抜粋

バリューチェーンについて

・バリューチェーンは下記に沿って考えるのが一般的です。
1. 「商品企画・開発」
2. 「原材料調達」
3. 「製造」
4. 「物流・流通」
5. 「販売」
6. 「アフターフォロー」

2. 経営資源の洗い出し

次に、洗い出したバリューチェーンに沿って取引先の特徴や長所を洗い出してみます

ポイントは競合他社と比較した際に強みとなる要素を見つけ出すことです。

例えば以下のようなものです。

■ 次々と生み出される企画
■ 幅広い調達手段
■ 製造技術の高さ
■ 営業エリア内を網羅した物流体制
■ 販売チャネルの多さ
■ 充実したアフターフォロー体制 など

3. VRIOの再確認

「2. 経営資源の洗い出し」で見つけた取引先の特徴・長所を再度評価します。

VRIOについて、もう一度見直してみましょう。

■ 提供価値はあるのか?

提供価値は「それを失ったら、業績に影響が出るかどうか」を基準にすると考えやすくなります。

価値が高い経営資源は競争において最大の武器です。

提供価値の注意点

銀行員の場合、貸借対照表(BS)に記載されているもので判断してしまいがちです。数値化されているので分かりやすいのですが、イコールの価値とはいえません。例えば、土地や店舗などの不動産を所有していても、競争価値があるとはいえません。逆に、優秀な人材や幅広い人脈といったBSには記載されないものが価値になる場合もあります。

■ 希少性はあるのか?

取引先の特徴を競合他社が本当に持っていないかどうか確認します。

一般的に、業界の半数以上が持っている経営資源は優位性がありません。

■ 本当に模倣は困難か?

いまは希少な経営資源だとしても、簡単に模倣できるなら希少ではありません。

斬新なアイデアや技術も時間の経過とともに陳腐化します。

もう一度、5つの要因を参考に、模倣されないような対策を検討してあげましょう。

■ 組織体制は問題ないか?

どんな優れた経営資源であっても、それを実行できる組織でなければ意味がありません

特に、多くの中小企業は戦略と組織がバラバラです。

戦略実行のための組織かどうかをチェックしてください。

もし、組織体制が不十分であれば新たな組織体制構築のコンサル提案をしてみてはいかがでしょうか。

まずは、それが先決かもしれません。

4. 経営資源への投資

以上の分析が済んだ後は、優位性を維持するための投資について考えます

どの経営資源を有効活用し、競争優位性を維持するべきかを判断します。

強みを活かすための投資も必要ですが、逆に不足している経営資源へ投資し、新たな強みを作り出すのも一つの戦略です。

取引先の「強み」を知る

VRIO分析について説明しました。

たとえ、銀行の利益にならなくても取引先の実態把握は重要です。

いま銀行に求められているものは「目利き力」です。

これは決算書などの財務諸表だけで判断するものではなく、事業を俯瞰的に見ることです。

多くの銀行員はこれが出来ていません。

今回のVRIO分析のようにフレームワークを使って取引先の実態を学ぶことは、結局はあなたの成長に繋がります

銀行のためではなく、あなたの成長のためにも是非コンサルティングの手法を学んでみてください。

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