地方銀行の将来性について、元銀行員のコンサルタントが語ります

地方銀行の衰退は経営の責任

では、外部環境の要因だけで地方銀行の衰退が起こったのでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。

経済環境は常に変わりうるものです。

変化に対応していくことが「経営」の基本です。

地方銀行に苦境が続いているのは経営者の責任でしょう。

地方銀行の施策

では、この状況の中で銀行の経営陣は何を施策として打ち出してきたでしょうか。

思い当たるものを3つほどあげてみました。

1. 投資信託などの運用商品
2. コンサルティング業務
3. 仲介業務(M&A、地域商社など)
では、次にこれらの施策がどうなっているかをみていきましょう。

1. 投資信託などの運用商品

まず、個人顧客向けの投資信託や保険販売などの手数料収入です。

しかし、過度な販売手法をとる金融機関が増加したため、金融庁から「顧客本位の業務運営に関する原則フィデューシャリー・デューティー)の徹底が求められました。

おそらく運用商品の手数料収入は今後伸び悩むのは間違いありません

ただ、目先は減収の可能性はありますが、今後も一定の収益源と銀行の経営陣は考えているはずです。

しかし、これまで短期売買を繰り返すことで収益に貢献していましたが、金融庁が求める適切な販売手法では大きな収益は得にくいかもしれません。

これからは銀行の経営陣が、どのような販売手法を選択していくのかが問われています。

2. コンサルティング業務

次は法人顧客向けの話です。

コンサルティング業務を内製化する地方銀行が増えてきました。

ただ、残念ながらコンサルティングで十分な収益を上げようとするなら、事業性融資の延長線上でのノウハウでは難しいでしょう。

現場の地方銀行の人材だけで、課題解決型のコンサルティングは非常に困難と推測します。

顧客ニーズを満たすコンサルティングができるほどのノウハウを積み上げることが出来るか、それがカギです。

また、地方銀行はこれまでコンサルティングとまでは行かなくても、取引先に対するアドバイスは無償で行ってきました

それを手数料単価の高いコンサルティング業務に切り替えるのは顧客との関係上も難しい面があるのではないでしょうか。

このため、地方銀行がコンサルティング業務で収益を上げることは容易ではないでしょう。

まずはコンサルティングに特化できる体制整備や人材育成・採用が必要です。

多少時間がかかっても「コンサルティング体制を構築する」という意思決定を経営者ができるかどうか、そこがポイントです。

ただ、時間がかかり過ぎた場合はもう存在価値のない銀行になってしまっている可能性もありますが。

3. 仲介業務(M&A、地域商社など)

最近は、事業承継などのM&A仲介業務が増加しています。

地方銀行は中小企業の取引先が多く、案件発掘が比較的簡易にできます。

また地方での事業承継ニーズは高いため、成約に結びつけやすいという特長もあります。

事業承継に伴うM&Aの仲介手数料などは収益性は高い業務です。

このため地方銀行が経営資源を投入すべき業務の一つと考えます。

しかし地域商社についてはどうでしょうか。

地域の特産品などを仲介する業務ですが、そもそも数年で異動する地方銀行の行員が地域の特産品についての知見があるとは思えません。

また顧客ニーズがそれほど高いとも思いません。

あまりメリットがある業務とは私は考えませんが、多くの地方銀行が地域商社に参入している現状をみると銀行側にニーズがあるのかもしれません

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銀行のビジネスモデルは「数量」勝負

ただ、コロナ感染拡大と地方経済の衰退により、事業承継ニーズを充足するM&Aの仲介より、事業再生企業のM&A支援が地方銀行では増加しているようです。

私が転職した企業にも、事業再生のM&A案件がたくさん持ち込まれ始めました。

しかしシナジー効果の薄い案件の紹介が多く、銀行が顧客のことをあまり把握されていない印象を受けます。

とりあえずM&A案件につながる情報は、深く考えずに、買い手企業に提供するという姿勢が垣間見えます。

やはり銀行は数量、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」の戦法を捨てきれていないのかもしれません。

単なるマッチングを行うだけの仲介では銀行の仲介業務は、そのうち廃れていくでしょう。

取引先の企業価値向上のために行う「ファイナンシャル・アドバイザリー業務」などへの対応が今後は必要となってくるでしょう。

しかし、銀行の経営陣がそこまでのことを考えているとは思えないので、結局は「数量勝負」「情報量の勝負」になりそうです。

労働集約型サービスの限界

ここまで述べたように、銀行のビジネスモデルは基本的に数量勝負です。

よって、手数料等を得るフロービジネスにおいても提案型セールスなど「高付加価値サービス提供による手数料収入」ではなく、労働集約型の「作業ベースの手数料収入」が地方銀行のビジネスモデルになってしまいます。

このため、預金や融資のボリュームが乏しい地方銀行では、結局は手数料ビジネスによって必要な利益を稼ぐことは難しいでしょう。

もし、これらのサービスを拡充する気なら、人材育成プラス、量と質の面での補強が必要です。

しかし、残念ながら地方の人口減少や景気動向を考えると、このような人海戦術の手数料ビジネスに人員を割くほどの余裕は地方銀行には現状ないでしょう。

地方銀行がコンサルや仲介など、手数料を得るビジネスに転換するというのは非効率だと考えます。

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将来性の薄い地方銀行

地方銀行の経営陣は、そのことを理解して成長戦略を描いているでしょうか。

おそらく、そんなことは全く考えていないのではないでしょうか。

これまでの主な施策をみると、結局は数量で勝負するビジネスモデルから脱却できていません

「経済が上向けば銀行も良くなる」程度の戦略しか頭にない気がします。

本来の銀行の役目は経済を回すことにあるはずですが、後追いです。

いまの戦略では地方銀行のビジネスモデルが終焉を迎える可能性が高いと私は思ってます。

今後、地方銀行への就職を考えている方は、銀行の戦略が将来性を考えているかどうかを見極めた方がいいです。


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