銀行員は50代でも転職できます 過去を振り返らなければ

銀行を辞めたい人は多い。

銀行で働いていると、「銀行辞めたい」と言う人が必ずいます。同僚や上司、部下、年齢性別を問いません。統計は取っていませんがタイミングに特に規則性はないでしょう。突然辞めたいと言い出します。

多くは20代の銀行員が多いですが、彼らはあっさり辞めることが多いです。しかし40代や50代ならどうでしょうか。簡単に退職に踏み切れるでしょうか。

今回はそんな銀行を退職したい人に向けてのアドバイスです。

銀行を退職するのは危ない橋を渡ることか

私は45歳で銀行退職。銀行員は50代でも大丈夫です。ただし条件があります。

条件は過去を振り返らないことです。

銀行員は辞めたい人だらけ

私は銀行員生活23年間で8回転勤しました。

転勤先のどの職場でも、退職者を見てきました。結婚や出産を機に辞めた人や、親の仕事を継ぐために退職した人もいました。中には不祥事によって退職させられた人もいます。

ただ、理由不明で辞めていった人もかなりいます。「理由不明」というのは、私が詳しく聞いていないからです。

なぜなら理由を聞くのが怖かったのです。私は退職についての前向きな話を聞きたくなかったのです。

そういう話を聞いてしまうと、自分が銀行に置いてけぼりになる感覚に陥ります。「いつまで銀行にしがみついているんだ」と退職していく人たちに言われているような感じが嫌だったのです。

だから周りの銀行員に辞めてもらいたくなかった。とにかく銀行にしがみついてくれと願っていました。そうすることで、自分の感情をごまかしていたのかもしれません。

相談する若い銀行員

30代後半になると若い部下たちから退職の相談をよく受けました。

なぜ相談をよく受けたかというと、私は冗談っぽく「銀行辞めたい」とよく言っていたからだと思います。彼らは私なら退職希望の話を分かってくれると思ったのでしょう。銀行在籍中は本当にたくさんの退職相談を受けました。

 

「自分は銀行員に向いていない」

「違う仕事がやりたい」

「ノルマがしんどい」

 

色々な理由を聞きましたが、どの相談に対しても私はこう答えていました。

「どこで働いてもサラリーマンなら結局一緒だよ」と。

正直、それは今も思っています。本当にやりたいことをするのなら、転職ではなく起業すべきでしょう。誰の指示を受けるでもなく、自分がしたいことを、したいときに仕事するのは起業するしかありません。起業すれば、自らノルマを課すことはあっても、誰かにノルマを課せられることはありません。

違う会社で結局サラリーマンをするのであれば、同じように自分には向いていないと思うかもしれません。だったら銀行で頑張ってもいいじゃないか、と私は退職予備軍を説得していました。

「将来が分からない転職より銀行の方が安心」という話をすると、たいていは納得してくれました。

しかし相談をしてくれた人たちは不満だったでしょう。日頃から銀行を辞めたいと言っている私が退職を思い止まるように説得するのです。不満に思って当然です。彼らは私に背中を押して欲しかったのかもしれません。そして私もそれは分かっていました。でも、できませんでした。自分だけが銀行員のまま働き続けるのがイヤだったからです。また銀行員という恵まれた職業を捨てる勇気もありませんでした。

私が説得しても、結局は銀行を辞めていった人もたくさんいます。起業した人もいましたが、大半は転職して一般企業で働き始めました。退職挨拶時には「大変だろうが頑張れよ」と余裕を見せたりもしました。しかし内心は少し驚いていました。また銀行を辞めるなんてもったいないとも思っていました。

将来のことなんて本当は誰も分からないのに、私は分かっているように振る舞っていました。退職者が周りから出るたび、自分にこう言い聞かせていました。

「同じ会社で働き続けることは素晴らしいことなんだ」と。

そしてこうも思っていました「本当に嫌になったらやり直せばいい」と。

銀行員はやり直せるのか

「自分は何歳になってもやり直せる」と考える人は多いでしょう。しかし現実的にはどうでしょうか。本当に何歳になってもやり直そうと思えるでしょうか。

例えば、50代ですべてをリセットしてやり直そうと思えますか。

「年齢を重ねると家族が増えて生活も守らなければいけないから50歳からやり直すのは難しい」といった答えもあるでしょう。ただ、私が言いたいのはそんな話ではありません。やり直すためには人間の深層心理を理解しないといけません。

そして考え方を変えれば50代からでもやり直せます

サンク・コスト効果

皆さんは「サンク・コスト」をご存知でしょうか。

採算が合わないことに対して、今後も継続するかどうかの意思決定をする際、次のようなことを考えてしまうことです。

 

「せっかく、これまで頑張ってきたんだから続けよう」

「今までかけた費用や時間がもったいない

「もう少し頑張って続けてみたら良くなるかも」

 

このように考えてしまい、結果的にどんどん深みにハマっていくことを「サンク・コスト効果」といいます。サンク・コストとは和訳すると「埋没費用」です。

既に支払って回収できないお金や時間などを経済学ではサンク・コストと呼びます。

銀行員のサンク・コスト

例えば、あなたが何かの試験を受けようとします。合格するためには勉強しなければいけません。合格するために学校に通うことにします。学費を支払い、家で勉強するためにの参考書を買います。飲み会を断り、家族や恋人との楽しい休日は勉強時間に充てます。仕事が終わり、疲れていても学校に向かい、帰宅してからも勉強します。そして結果的には不合格でした。合格にはほど遠い点数です。勉強しながら、自分には向いていない試験だなと感じたこともありました。

さあ、あなたは試験に合格するための勉強を続けますか?

おそらく、ほとんどの人はこう思うはずです。

これまでの費用や時間がもったいないからもう少し頑張ってみよう」

そして、もっと勉強するために通信講座を受講したり、違う参考書を購入したり、たまの休暇も潰したり、余計に費用や時間をかけます。とても合格できそうにないと思っているにも関わらず、勉強を続けるのです。

例え合格しても、これまでの費用や時間は返ってきません。しかし、なぜかもったいないと思うのです。

将来の回収見込みが無いのに、過去に引きずられて非合理な意思決定をしてしまうのです。

食べ放題のバイキングや、ネットオークションなども同様です。バイキングで払った金額以上食べないと損だと思い、お腹いっぱいなのに元を取ろうと考えて必要以上に食べてしまいます。ネットオークションでは、ついつい自分の予算をオーバーして入札し、高額品を掴まされることもあります。

どれもこれも、自分が費やした費用や時間をもったいないと思うからです。過去に支払ってしまい将来も取り戻すことが出来ない費用がサンク・コストです。

意思決定は将来で考える

本来、意思決定は将来のみ考えて判断すべきです。というよりも、そもそも意思決定とは将来についてしか行えません。

将来について考慮するときにサンク・コストを計算に入れてはいけません。将来のリターンのみ算出すべきです。コストは将来にかかる分だけで計算すればいいのです。

過去のコストはいつまで経っても取り戻すことは困難です。お金なら回収可能性はゼロではないですが、時間は絶対に取り戻せません。

そんなことは分かっていても、費やした時間をもったいないと思うのが人間です。意思決定の場面で、しばしば過去に費やした時間を考慮して私達は判断をしてしまいます。

過去の投資コストが大きければ大きいほど、将来の意思決定に影響を与えるのです。

50代の銀行員はこれまでの時間をもったいないと考える

職業選択も同様です。せっかく苦労して経験を積んてきた会社や職業を捨て、転職や起業するという行為を愚かだと考えます。

将来どうなりたいかを考えるときに、過去の自分を見つめ直してしまいます。過去にどんなに苦労をしてきたとしてもそれは単なる経験です。

「辛い思いをして頑張ってきたから、これからきっと良いことがある」という確証はありません。

経験はその人の成長を促すかもしれませんが、意思決定の重要な要素にしてしまうと、人は新しいことが出来ません。

頑張った時間が長ければ長いほど、人はその費用や時間をもったいないと考えて、やり直すことをためらいます。だから50代の銀行員は、若い人よりも過去の時間をもったいないと考えてしまうでしょう。

行動経済学で銀行員を考える

年齢を重ねれば重ねるほど、やり直すのがもったいないと感じます。

ただし、考え方を変えれば50代からやり直すのも問題ありません。これまで費やしてきた時間をもったいないと思わなければいいのです。

予想どおりに不合理

将来のことを考えるのに、過去の自分は関係ありません。サンク・コストを考慮してしまうと合理的な意思決定は出来ません

経済学の中でも「行動経済学」という分野ではサンク・コスト効果というテーマで研究が進んでいます。「行動経済学」は従来の経済学では説明することが難しい人間の経済活動を心理という面から解明しようとする学問です。簡単にいえば「なんでそんなことをしてしまうのか?」を追求する学問です。

行動経済学のベストセラー「予想どおりに不合理」を一度読んでみると考え方が変わります。過去の時間をコストだと思わなくなります。

銀行を辞めたい人は過去を振り返らないこと

年齢を重ねて退職を決意するのは本当に大変です。過去の頑張ったことが無駄になるかもしれないと思うからです。頑張った時間が長ければ長いほど、退職をためらうはずです。「頑張り続ければ良いことがある」と伝えた昔の部下たちに謝りたいです。そして改めてこう伝えます。

将来を決めるのは、過去に頑張った自分ではない。今からのことだけを考えて決めればいい。

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