大学の経済学部出身の方は多いと思いますが、経済学について理解している人はそれほど多くありません。
なぜ、理解している人が少ないかといえば、従来の経済学は現実と大きくずれていたからです。
そこで、現実に合うよう修正し変えたものが「行動経済学」という分野です。
今回は「行動経済学」を使った簡単な事例を紹介します。
銀行業界は、人々の日常生活やビジネスの運営に欠かせない存在です。しかし、近年ではテクノロジーの進歩や競合他社との激しい競争の中で、銀行は顧客の信頼と満足度を高めることがますます重要となっています。そのためには、銀行員は顧客の意思決定や行[…]
経済とは
経済学がテーマとする「経済」とはそもそも何でしょうか。
「経済」とは「生活に関連してお金を使うこと」です。
お金に対しての考え方は人によって違うはずですが、従来の経済学では一律に想定されています。
それを「合理的経済人(ホモエコノミクス)」といいます。
▶人は極めて知的で、強い自制心があり、自分の利益だけを考える
現在バイアス
分かりやすい例が「現在バイアス」と呼ばれる、行動心理です。
▶将来よりも今を重視する考え方
ナッジとは
人がつい取ってしまう意思決定のズレや歪みを、より良く変えようとする行動のことを「ナッジ」といいます。
「ナッジ」は依頼や強制によって、人にやらせるのではなく「背中を押す」ように誘導し、手助けしようとする考え方です。
依頼や強制は、金銭のインセンティブ(報酬)を伴うことが多いですが、「ナッジ」は、人の行動変容を引き起こすことが肝なので、インセンティブの発生を抑制させる効果があります。
▶人に「やらせる」のではなく「背中を押す」ように誘導し、手助けしようとする考え方
ナッジを活用するのに覚えておくべきこと
「ナッジ」を活用するために重要なのは、相手を選ぶことです。
現在バイアスがある人は2つのタイプに分かれます。
目の前のことばかりを気にしてしまうのは危険だと分かっている人と、何も気づいていない人です。
ナッジが効く人を見極める
Bさんのような「ナイーフ」の人に、いくらナッジを活用して促しても動かすことはできません。
対してAさんのような人にはナッジが有効です。
Aさんは「今のことばかり気にかけてはダメだ」と分かっているので、背中を押してあげれば行動し始めます。
ナッジはお金をかけずに解決する手段
補助金などの金銭インセンティブに頼る政策には限界があります。
そこで期待されているのがナッジの活用です。
ナッジはより良い行動を選択するよう促し、手助けする手法です。
そこに金銭インセンティブは発生しません。
つまり「お金をかけずに課題解決する」ことが出来ます。
銀行で言えば、無駄な金利競争や手数料競争を避けることができるかもしれません。
取引先にいくつか提案してみてはいかがでしょうか。
簡単なナッジの事例
いくつかナッジを使ったコンサル手法をお伝えします。
取引先に仕掛けるツールとして使ってみてください。
「みんなやっています」
一番分かりやすい例は「みんなやっています」という言葉です。
人の意思決定に一番影響するのはどの言葉なのか?という実験があります。
- 未来の環境のために、電気のムダ遣いは止めよう
- よりよい社会のために、電気のムダ遣いは止めよう
- あなたの家の電気代節約のために、電気のムダ遣いは止めよう
- 周りの皆さんは、電気のムダ遣いはしていません
上の4つの設問をしたときに、実際に電気のムダ遣いをしなくなる割合で一番高いのは④です。
人は、未来のためでも、現在の社会のためでも、自分のためでもなく、周囲がやっていることを一番気にします。
人は意思決定の際に、世間や周りの評判を判断材料にしてしまいます。
いくら自分が決めたことでも、他人からの評価を気にしない人はいません。
これを「バンドワゴン効果」といいます。
▶意思決定の際に、世間や周りの評判を判断材料にすること
「ポイントがつく」より「もったいない」
人は損失を嫌います。
1万円儲けるよりも、1万円損する方が心に残ります。
この損失を回避する行動を利用するのも効果的です。
例えば次のようなセールストークではどちらが客は心を動かされるでしょうか。
両方とも同じことを言っていますが「もったいない」と言われる方が人は反応します。
損失回避の心理行動を利用するのもナッジの一つです。
もちろん、言うだけなら無料です。
取引先の経営改善にも使えるナッジ
銀行の営業トークにも使えますが、取引先の経営改善に活用させることも可能です。
事例をあげておきます。
私が担当する売上不振先の食品スーパーが販促費(広告宣伝費)を削っていました。
私はその企業に高提案しました。
「販促費は削らず、地域限定のチラシを出してください」と指導しました。
そのチラシには「あなたの近所の人に愛されてます」と「あなたは私たちスーパーのことを知らないだけです」という言葉を入れてもらいました。
すると売上はそのエリア内で倍以上伸びました。
心理学の応用 行動経済学でコンサル営業
簡単に行動経済学の活用を読んで頂きました。
他にも使える手法はたくさんあります。
皆さんもぜひ実践してみてください。
コンサルティング営業をする上で、財務諸表(決算書)は取引先の実態を知る強力な情報源です。しかし財務諸表だけを見て、取引先を判断するのはたいへん危険です。なぜなら、財務諸表だけでは把握できない情報があるからです。今回の記事は、銀行[…]