銀行員のコンサルティング営業 ー経営分析 決算書の注意点ー

コンサルティング営業をする上で、財務諸表(決算書)は取引先の実態を知る強力な情報源です。

しかし財務諸表だけを見て、取引先を判断するのはたいへん危険です。

なぜなら、財務諸表だけでは把握できない情報があるからです。

今回の記事は、銀行員が取引先を経営分析・判断するうえで重要な財務諸表のリスクについての記事です。

次のような方が読めば、経営分析の理解が深まります。

  • 新入行員
  • 法人担当の銀行員
  • 融資の判断能力を高めたい人
  • 取引先の実態把握をしたい人

財務諸表(決算書)の注意点について

財務諸表には次の5つの注意点があります。財務諸表だけでは分からない情報があります。

1.お金に換算されないものは開示されない
2.正確性は会計基準に基づくだけであり、経営の「実態」ではない
3.会計基準は一つではない
4.財務諸表は要約された情報
5.過去の一定期間、一時点しか表せない

お金に換算されないものは表示されない

財務諸表には、お金に換算されない情報は表示できません。

例えば、次のようなものです。

財務諸表に表示されない情報

■従業員のスキルや技術、保有資格など
■商品やサービスの品質や価値
■特許やノウハウ
■ブランド力 

本来、取引先の価値を図るうえで重要な要素であるはずの情報が、財務諸表には記載されません。
それは価値を測定できないからです。
つまり、融資をする上で一番重要な「取引先の価値情報」は、財務諸表には載らないのです。
理想としては、これらも数値化すべきですが、それは非常に困難です。
現在の会計基準では不可能なため、オフバランス(簿外)として考えます。
取引先を分析・判断する際には気をつけましょう。

経営の「実態」ではない

つぎに財務諸表は会計基準に基づいて作成されるだけ、ということを知っておきましょう。
つまり、売上高として1億円計上されていても、実際に「何を、いつ、どのようにして、誰に、なぜ売ったのか」は分かりません。
簡単にいえば「一定期間内に1億円の売上があった」だけしか分かりません。
財務諸表は取引先の規模などを把握するための、大まかな情報と考えましょう。

会計基準は一つではない

取引先の業績は会計基準に則って作成されます。

しかし、取引先によって採用する会計基準が違う場合があります。

例えば、国際会計基準(IFRS)という基準があります。

IFRSについての詳細は長くなりますので省略しますが、簡単に説明しておきます。

国際会計基準(IFRS)について

国際会計基準(IFRS)と日本の会計基準の大きな違いがいくつかあります。

ただ、覚えておくべきは、どちらの方が正しいということはなく、どちらも正しいということです。

要は基準が違うだけです。

項目国際会計基準(IFRS)日本の会計基準
売上の考え方原則主義実現主義
非上場株式の評価時価評価原則は取得原価
のれん非償却20年以内で償却
固定資産の耐用年数企業が固定資産を使う予定期間耐用年数

IFRSの「原則主義」とは、原則だけ明確にし、実際の運用は各企業に任せます。

これに対し、日本は基準を細かく定めたうえでの「実現主義」です。

「実現主義」とは、商品やサービスの引渡して、対価として現金や売掛金等を取得した時点で売上を計上する(売上が実現した)と定めた基準です。

ちなみに、日本では売上の考え方(収益認識基準といいます)に関して、2021年4月1日以後に開始する事業年度の期首より企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(いわゆる「新収益認識基準」)が強制適用されます。

日本会計基準も基本的には国際会計基準(IFRS)とほぼ同じになります。

すでに先行している日本企業もたくさんあります。

IFRS適用済・適用決定会社一覧

財務諸表は要約された情報

財務諸表は要約された情報です。分解しても仕訳までしか分かりません。
例えば110万円の売上があったとします。簿記上の仕訳は次のとおりです。
借方金額貸方金額
現金1,000,000売上高1,000,000
  仮受消費税

100,000

表で分かるのは、商品(サービス)を販売し、対価として現金を受け取ったということだけです。

何を販売したのかは摘要欄などに記載しなければ分かりません。

つまり、会計はあくまでも帳簿をつけるためのツールで、事業についての実態把握は非常に分かりにくいということです。

過去の一定期間や、一時点しか表せない

財務諸表(決算書)は、過去の一定期間(損益計算書)、あるいは一時点(貸借対照表)を表すだけです。

いうなれば、写真や静止画みたいなものです。キレイにしようと思えば、加工(お化粧)できます。

ビジネスは継続的な活動です。ただ財務諸表は、その一時点や一定期間を切り取っただけです。

ビジネスのサイクルは業種や事業によって違う

ビジネスサイクルについても理解が必要です。

通常、財務諸表(決算書)は1年や四半期(3か月)ごとという期限があります。

しかし、ビジネスは継続的に行われ、本来期限などありません

例えば、薬の研究開発は何十年もかかることがあります。

逆にアパレルなどは、季節ごとに売れる商品は違いますので3~4か月ごとに商品を入れ替えないといけません。

ただ、財務諸表だけを見ると1年間で一巡するかのように表現されます。

これでは、取引先の本来の姿は非常に分かりにくいのではないでしょうか。

単年度の財務諸表で判断するのは危険

取引先を単年度だけの財務諸表で判断するのは非常に危険です。

少なくとも3~5年の財務諸表をデータ化し、時系列分析をする必要があります。

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銀行員は財務諸表をうまく使おう

財務諸表はあくまでも、取引先の概要を把握するためのものです。

実態については財務諸表だけでは分かりません。

ただ、勘違いしてはいけないのは財務諸表を全否定してはいけません。

大まかな数値やデータでも、取引先の実態はある程度は把握できます。

詳細な数値やデータ、従業員のスキルやノウハウなどの非財務情報は取引先の実態把握には必要ですが、取得するには時間がかかります。

銀行員には判断スピードも求められるので、財務諸表による分析をおろそかにしてはいけません

取引先に対して適度なスピード感を持った対応をするには、まず財務諸表(決算書)を分析することを心がけましょう。

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